副島 啓一
もともと、大学ではWEBのクローラーの研究をしていて、大学院にも行くつもりでした。大学4年の時、モバイル系ベンチャーで営業のインターンをしていた時に「ビジネスを立ち上げるのって面白い!」と思い、院に行かずに就職することにしたんです。
社会人2年目の時、モバイル系事業の会社立ち上げをやるというタイミングで、古澤(取締役Founder)とも知り合うことになりました。検索マーケティングを使って、会社や事業を伸ばしていたのを思い出します。途中、3か月シリコンバレーで放浪してみたり、その後会社の立ち上げを行い、日本ではまだ馴染みのなかった新卒採用向けスカウトツールの開発をしたり(iroots、のちに事業売却)。事業の立ち上げをがむしゃらに行っていた20代でした。
事業売却等もしていて、さて次はどんなビジネスをしようかな、と当時考えていました。
そんな矢先、MIERUCAというツールを開発している、という話を古澤から聞きました。大学で行っていた専門に近かったですし、自分でクラウド型ツールを開発して成功させた経験や、検索マーケティングを数年来実施していたこともあり、このツールを成長させてみたい、と考えたのが開発に参画したキッカケです。
――と、色々結果論的には語れますが、「古澤とよく飲んでたから」が本当の答えですね。(笑)
まず、Faber CompanyにはSEOを5年10年とやってきた信用や知見があること。
MIERUCAの構想も面白そうだし、グローバルに向けて開発していくことで、自分自身のビジネス構築力と経験を一つ上に押し上げることが出来るな、というのも魅力でした。プロダクトが成長し、成功するイメージを持っていたのも大きな理由です。
ただ、スタート2か月目で、大きな壁にぶつかったのを今でも覚えています。
実は技術的な課題がありまして・・・
一つ挙げると、サイトのメインコンテンツ(ヘッダー、サイドバー、フッター)を自動で判別する事についての課題です。これを解決しようと考えた時、過去の経験から「似たような問題を解いている人は世の中にはいるはずだ」と思い、徹底的に論文をリサーチしたところ、「大学の先生の力が必要だ!」となったんです。
色々教えていただきたい、という一心で、何回か電話をかけたらお会いできることになりました。(先生の後日談:2回も電話かけてきたので、会わないとまずいと思ってくださったそうです。)
そんな流れから、産学連携もスタートする事となり、技術的な課題を解決するスピードが上がりました。
ビジネスは、技術的に優れていてもやはり売れないと始まりません。
初めは手探りで開発をしており、最初の機能を開発するのに1年近くを要しました。現在のMIERUCAには40種近い機能が備わっていますが、リリース当初はたった1つの機能だけだったんです。画面にキーワードを入力すると、「そのキーワードならユーザーはこんなテーマも知りたがっていますよ」というキーワードを20個くらい抽出する、といったことしかできませんでした。
単機能しかなかったMIERUCAβ版を、知り合いのユーザーに「試験的」に使ってもらったところ、「これ欲しいからお金を払うよ」という方が現れました。「えっ、売れたー!」ってもうびっくりです。(笑)
デザインもそっけないし、自分たちが求めていた構想からはほど遠かったにも関わらず、「この機能で売れた!」ということにかなりの衝撃を受けた事を覚えています。
やはり、開発や企画で考えているアイデアと、お客さんが「お金を出してでも欲しい」と感じるものって違うなと。改めて、β版でお客さんの行動を観察し、何が本当に必要なのか?何にお金を払うのか?を見定めないといけないと思いました。 初めに売れてから、月日が経ち、競合等も出てきた市場環境の中で、戦い方は少し変化しています。開発にあたって、どんな機能が喜ばれるかもさることながら、機能だけでは差別化できない時代が来るだろうと。なので、レスポンスの早さや利便性の向上含め、UXの重要性を頭に入れて開発をしていくようにしています。
成功するまで、とにかく地道に続けることでしょうか。
あとは、余計な事をしない。
振り返ると、自分たちの実力値以上の事をやろうとすると、どこかでドツボにハマったり、お客さんの信頼を失うことになるんですよね。なので、自分たちの実力を高めるために「現場にでて、何が起きているかを観察し、コツコツやるしかない」と思っています。
また、段々と「事業と関係ないこと」、「余計な事こと」をしたくなるんですよね。そしてそれは大抵の場合はうまくいかない。何故なら、その間にライバルは一歩先に進むから。(笑)
今の自分の実力を客観的に眺め、勝てるポジションを見定め、細かく修正をし続けることが、重要だと思います。それが事業を軌道に乗せていく秘訣かなとも思ってます。
小学生の頃から「信長の野望」というゲームが大好きで(笑)、どうやったら最弱の大名でいち早く天下統一ができるかなとか、そんなことをひたすらやってました。あとは、戦国時代の陣形(たとえば関ケ原の戦いの図)とかを眺めるが大好きでして。陣形って、刻々と変化する戦況の中で、最適解になっているんですよね。美しいと思います。いかに被害を抑えるか、戦略上の重要な目標を達成できるか?(戦国時代は生きるか死ぬか、がかかってますから。)この影響が大きいと思います。
同様に、ビジネスでも1日1日と状況が刻々と変化しますし、自分が今どんなステージにいるのかを見極めながら、組織としてチームとして今取りうる最良の手を判断し、実行しています。
それから、勝負は「ちょっとした情報や行動の差」で決まる事も多いイメージがあり、重要視しています。先ほどの“単機能で売れた“という想定外の話も、「単機能だけど試してみてよ!」という行動をしていなければ、立ち上げがあと3カ月か半年先まで伸びていたかもしれません。
だから、自分が経験したことの無いものや、新しい視点を得たいときは、すぐに周りのしかるべき人に相談したり、小さくスタート出来ないかを試したります。
困ったときに、相談できるメンターを20代の頃から作っておくのも大事ですね。
リリースした後にようやく腹落ちしたのですが、MIERUCAによって新しい情報やコンテクストが増えていくことは価値が高いと感じました。
自分のウェブサイトで書くべきテーマとか、説明すべき情報とかが本当はあるのに、たまたま思い付かなかったために書くことができない。そういうケースって結構あるはずなんです。そんなとき、MIERUCAでキーワードリストを作成すれば、その人の発想を助けることができますし、新しい発想が生まれるきっかけにもなっていきます。
思考を広げるという領域に、一石を投じることができたツールなのではないかなと思っています。
有難いことに、お客様も増えているので社会的責任も大きくなってきていますし、技術的にも(深層学習等)進化が激しい業界です。
忙しいという感覚より、この変化や進化が楽しいという感情が強いですね。
社内からはよく「元気だね」「タフだね」と言われます。たとえば夜中の3時に起きて、始発電車で湘南に行ってサーフィンして、朝8時半には出社して、働いて、次の日もまた・・・とか。
仕事も家庭も健康も大事で、人生は一回なのでやりきりたいだけなんですけどね。
Faber Companyのエンジニアは、MIERUCAに応用している自然言語処理の基礎を身につけることができるし、ビジネス感覚を養える点も、普通の会社と違うところだと思います。
自分よがりなプロダクトを作ってしまうのでなく、世間様に役立つ開発をしよう。というのを考えてます。
現在、ベトナム支社にも多数のエンジニアがおり、今後の方針として、他のアジア地域などにも海外展開をしていく予定です。日本で採用するメンバーも、海外で仕事をしてもらうことになるはずです。
個人的に、一緒に働きたいのは、「何か一つでも、やりきった経験がある」人。
その経験は、自信にもなりますし、社会で活躍する人材になると思います。
日本初のグローバルなツールやソフトウェアって、まだ少ないという印象です。日本人の物事に対する多面的な見方や、色々なものを受け入れる観点は、プロダクトを作るうえで強みになると考えています。
人種や文化の壁を越えて、利用されるツールにしていきたいですね。
会社や事業の立ち上げをやってきて思うのは、経営やビジネスは、「答えのない世界に答えを作る」という点ですごく面白いということ。僕が40歳、50歳、60歳になってもずっとやり続けたいと思っています。